アルミニウム形材の選定において、品質はもちろんのこと、環境への配慮もますます重要な要素です。
当社では、高純度な「新塊(バージン材)ビレット」と、環境負荷の低減に貢献する「再生塊(リサイクル)ビレット」を製品の特性やお客様のニーズに応じて適切に使い分け、徹底した品質管理体制のもとでお届けしています。
本記事では、これら2種類のビレットの特性の違い、再生材活用による環境メリット、そしてお客様に安心してお使いいただくための当社の品質保証への取り組みについて、ご案内します。
1.【基本特性】新塊ビレットと再生塊ビレット、それぞれの強み

当社のビレット使用における基本方針
当社では、アルミニウム形材の押出成形において、主に6000系合金(6063、6005C、6061)のビレットを使用しています。その際、新塊ビレットを約80%、再生塊ビレットを約20%の割合で採用し、高い品質基準を維持しながら、環境負荷の低減にも積極的に取り組んでいます。
使用しているビレットの主なサイズは以下の通りです。
- φ155 × 5800 mm
- φ204 × 5800 mmまたは 6000 mm
これらのビレットを必要な長さに切断し、お客様の求める様々な形状へと押し出しています。
新塊ビレット:最高の純度と性能を追求
新塊ビレットは、ボーキサイトから新たに精錬されたアルミニウムを原料としており、純度が非常に高く、介在物や不純物が極めて少ないのが特徴です。
これにより、特に高い強度が求められる製品や、表面処理後の外観品質が重要視される製品において、その優れた性能を発揮します。
再生塊ビレット:地球環境に配慮した選択
再生塊ビレットは、使用済みのアルミニウム製品や製造工程で発生したスクラップなどをリサイクルして製造されます。
最大のメリットは、地球環境への負荷を大幅に低減できる点にあります。後述しますが、再生アルミの製造に必要なエネルギーは新塊に比べてごくわずかです。
品質は同等、安心の6000系合金
「再生材(リサイクルビレット)だと品質が劣るのでは?」とご心配されるお客様もいらっしゃるかもしれません。どうぞご安心ください。
しかし、当社が使用する6000系の再生塊ビレットは、厳格な成分調整と品質管理が行われており、新塊ビレットと比較しても遜色のない機械的性質や加工性を有しています。 どちらのビレットをお選びいただいても、安心して製品にご使用いただけます。
新塊ビレットも再生塊ビレットも、その出発点となる原材料は異なりますが、どちらも最終製品としてJIS規格などの厳格な合金基準を満たすよう、溶解・鋳造の段階で化学成分が精密に調整されるという共通の工程を経ています。
この徹底した成分調整と、それに続く厳格な品質管理体制があるからこそ、当社がご提供する6000系の再生塊ビレットは、新塊ビレットと比較しても遜色のない機械的性質や優れた加工性を安定して実現しているのです。
そのため、どちらの種類のビレットをお選びいただいても、お客様の求める高い品質基準でお応えできますので、ご使用目的に合わせて安心してお選びいただけます。
※アルミニウムは自然界にそのままの状態で存在することは、ほとんどありません。ボーキサイトという鉱石に加工を繰り返すことでアルミニウムが誕生します。その際に必要な成分・純度に調整し、用途に応じてインゴットあるいはスラブ、ビレットに鋳造されます。
2. 【環境貢献】再生アルミビレットがSDGs達成に寄与する理由
再生アルミビレットの活用は、持続可能な社会の実現、すなわちSDGsの目標達成に大きく貢献します。
圧倒的なエネルギー効率:新塊製造時のわずか3%の電力
アルミニウムは融点が660℃と他の主要金属に比べて比較的低いため、リサイクルしやすいという大きな特性を持っています。再生アルミビレットを製造する際に必要なエネルギーは、新塊ビレットを製造する場合のわずか3%程度で済むとされています。 これは、エネルギー消費の大幅な節約に繋がります。
CO2排出量の大幅削減:約97%の削減効果
エネルギー消費量が少ないということは、それに伴う二酸化炭素(CO2)の排出量も大幅に抑制できることを意味します。再生ビレットの利用は、電力使用量を約97%削減し、CO2排出量も同様に大きく削減することが可能です。
リサイクルの王様
これらの優れたリサイクル特性から、アルミニウムは「リサイクルの王様」とも称され、循環型社会を形成する上で非常に重要な役割を担う金属です。 当社でも、押出成形後に発生する端材(スクラップ)は全て回収し、再び再生ビレットとして利用されるようリサイクルプロセスに回しています。
3. 【品質保証体制】安定供給と国際基準への適合をお約束
お客様に常に高品質なアルミ形材を安定的にお届けするために、当社では厳格な品質保証体制を構築しています。
受入検査:JIS基準適合と外観の厳格チェック
仕入れ先からビレットが納入される際、まずは提供された化学成分の分析結果(ミルシート)を精査し、JIS(日本産業規格)の基準を満たし、押出成形に適した材質であるかを確認します。
その後、ビレット一本一本の表面に亀裂や介在物の混入といった欠陥がないか、熟練した作業員による目視検査を徹底しています。
製造工程における不純物管理の徹底
いくらビレット自体の成分が基準を満たしていても、製造工程で不純物が混入してしまっては、最終製品の品質に影響が出かねません。
当社では、ビレットの表面を専用の機械でブラッシングし、押出機に投入する直前にも金型や関連設備に圧縮空気を吹き付けて微細なゴミや異物を除去するなど、クリーンな状態での作業を心がけています。
RoHS指令・REACH規則への完全準拠
当社のビレットは、製品中の特定有害物質の使用を制限するEUのRoHS指令、および化学物質の登録・評価・認可・制限に関するEUのREACH規則に完全準拠しています。
これにより、お客様の製品が国際的な環境規制に対応できるようサポートいたします。
以下の主要管理対象物質をはじめ、規制対象となる化学物質の含有量を適切に管理しています。

- シリコン (Si)
- 鉄 (Fe)
- 銅 (Cu)
- マンガン (Mn)
- マグネシウム (Mg)
- クロム (Cr)
- 亜鉛 (Zn)
- チタン (Ti)
(上記はアルミニウム合金の代表的な元素であり、これらの元素そのものが有害物質というわけではなく、RoHS/REACHで規制される特定の有害化学物質の含有量を管理しています)
また、アルマイト加工や塗装加工といった表面処理をご依頼いただく場合も、使用する薬剤等がこれらの規制に適合しているかを確認の上、製品をお届けしています。
製品検査:JIS基準を満たす最終確認
押出成形後、そして必要に応じて熱処理や表面処理が完了した製品は、最終的にお客様の要求仕様およびJIS基準を満たしているかを確認するため、引張試験や硬さ試験など、複数の品質検査を実施します。
検査に合格した製品のみが、お客様のもとへ出荷されます。
水力発電によるグリーンアルミニウムのご提案も
さらに、環境意識の高いお客様のニーズにお応えするため、一部のビレットにおいては、製造時の使用電力を100%水力発電で賄った、いわゆる「グリーンアルミニウム」のご提案も可能です。
これらのビレットを使用することで、製品のライフサイクル全体でのCO2排出量をより一層削減できます。
必要に応じて、その旨を証明する書類の発行も可能ですので、お気軽にご相談ください。
4. まとめ:品質と環境配慮を両立し、お客様の価値創造に貢献
当社では、アルミ形材の提供を通じて、お客様の製品開発と事業の成功に貢献することを目指しています。
そのために、
- 新塊ビレットと再生塊ビレットの特性を最大限に活かした材料選定
- 再生材活用による積極的な環境負荷低減(SDGsへの貢献)
- 受入から製造、最終検査に至るまでの徹底した品質管理体制
- RoHS指令・REACH規則といった国際的な環境規制への完全準拠
当社は、これらの取り組みを継続することで、高品質で信頼性が高く、かつ環境にも配慮したアルミ形材を安定的にお届けしてまいります。
アルミビレットの選定や品質、環境対応に関するご質問やご要望がございましたら、どうぞお気軽に加藤軽金属工業株式会社までお問い合わせください。